こんにちは、おつまみ(@otsumami082)です。
2019年12月1日に和光大学内で行われた『火起こしから始める「たき火」ワークショップ』なるものに参加してきました。
講師はなんと『火起こし世界チャンピオン』関根秀樹先生!!
今回は、そんなレジェンド級の先生から教わった火起こしのコツやワークショップの様子などを紹介していきます。
もくじ
講師は『火起こし世界チャンピオン』関根秀樹先生
講師は原始技術史研究者の関根秀樹先生。
関根先生はなんと
火起こし大会の世界チャンピオン!
なのです。
3秒(4秒説もあり)あれば、摩擦発火法で火種を作ることができるというまさに伝説的な人物。
他のサバイバリストの追随を許さない関根さんの火起こし技術は、古代から現代までの文献から導き出された人類の叡智、歴史を踏襲したもの。
経験則だけに頼らない、豊富なエビデンスに裏打ちされている確かな技術なのです。
関根先生は多才な方で、他にもたくさんの肩書をお持ちでいらっしゃいます。
関根先生の主な肩書
- 原始技術史研究家
- 古代技術史・民族文化研究家
- 民族音楽研究家
- 刃物研究家
- 武術研究家
- 和光大学非常勤講師
- ライター
著書は共著を含めると実に40冊以上!
関根先生の主な著書
一般のサバイバリストとは違うアカデミックな匂いがプンプンしますね。
小さな頃から好奇心旺盛で文献を漁るのが大好きだったという関根先生。
小学生の頃にはヘチマから硝酸カリウムを抽出し、火薬を作って遊んでいたという「やんちゃ」っぷり。(ある種、グレて暴走族になるのより怖いw)
還暦間近の今でも年に500以上の文献に目を通すのだとか。(スゴイの一言)
スマホやパソコンは所持しているものの、SNSは一切やらずに、情報収集は主に紙媒体とのこと。
もはや生きる文献ですね。(^o^)
いざ和光大学内の火起こしワークショップへ
関根先生面白い!!
これは教えを請わざるを得ない!
というわけで和光大学のある東京都町田市鶴川駅に到着。
実は集合時間から2時間遅れちゃいました٩(๑´3`๑)۶
駅前にはスタバを始めとしたカフェ、カラオケ屋、コンビニなどがあり、便利な場所。駅のすぐ近くを流れる鶴見川にはコガモの大群が居ります。
カワイイ♡
のどかな田園風景
鶴川駅から15分ほど歩いたところにありました、和光大学!
火起こしワークショップの様子
大学正門を奥に進むと
皆さん既に始めてますね。(^o^)
世界チャンピオンの弓切り式火起こし
その様子をしばらく眺めていると、関根先生が弓切り式火起こしを実演!
左手首(ヒキリ棒を支えている側の手)を脛の外側にあてがってブレないようにするのがコツだそうです。
紐をヒキリ棒に2回巻いている点に注目。これは腕の前後運動をしっかりと回転力に変えるための工夫。
火種をほぐした麻ひもに移します。
息を吹きかけ火種に酸素を送る。
ぐるぐる回してさらに酸素を供給。
勢いよく発火!
さすが無駄がない…
力みがないというか自然体というか。
弓切り式の実演はこれにて終了。
そして、きりもみ式の実演はすでに終わっていた模様。(遅れたのが悔やまれる)
きりもみ式の実演をもう一度お願いしようかなと思いましたが、遅れてきた手前気まずい。(お願いすれば100%実演してくれたでしょうけど)
実演をお願いするのは流石にやめましたが、火起こしに関する疑問がいくつかあったので聞いてみました。
そのときに得られた知識は記事の終わりにまとめておきますね。(^o^)
関根先生のワークショップはとにかく自由
参加者の人数は15人位でしょうか。
男女比率は男性6:女性4くらいの比率。
年齢層は5歳位〜60歳近くの方までと幅広く、中学生以下の方はそのうち3名ほど。
狩猟免許保持者である大学生と思しき女性の方もいらっしゃいました。(この方とは狩猟トークに花が咲きました(^o^))
あと、関根先生は武術家でもあられる関係上、武術を嗜んでいる若い参加者の方が数名いらっしゃいました。
唐突に若者たちのリクエストで関根先生の武術実演・指導ワークショップがゲリラ開催されるという激アツな展開に(火起こしは何処にw)
そしてなんと参加者の中には武術研究家としてご高名な甲野善紀先生もいらっしゃいました!
甲野先生は着物姿で黙々とナタで薪を割っておられましたね。
なんとも美しい佇まいでしたよ^_^
ワークショップと銘打っていますが、お硬い雰囲気はまったくなく
ある人は火起こしに没頭し
ある人は焚き火で料理をし
ある人は武術・歴史談義に花を咲かせると行った具合で終始緩やかな雰囲気で時間が過ぎていきました。
日の入りも近くなった頃合いに豚汁や焼きそばが完成。
他にもサンマ、焼き芋という秋の味覚が登場。
賑やかしになるかなと思い、私は鹿のモモ肉とクマの脂身を持参。
これがなんと大好評!!
焼き上がるやいなや、肉と脂身が一瞬にしてなくなるという予想だにしない自体に!
特に子供達の食い付きが半端じゃなかったw
٩(๑´3`๑)۶ヤッタゼ
もっと肉を持ってくればよかったと後悔(ウチの冷凍庫には5kgぐらいの鹿肉+クマ肉が眠っているのですよ・ω・)
不思議な楽器達
食事が終わると、関根先生がおもむろに自作の民族楽器を持ってきてくれました。
鎖鎌のように振り回すと音が出る、謎の楽器。
ウェポン(武器)にしか見えない(^_^;)(※殺傷能力はありません)
フィリピンの首狩り族が使っていたこちらの楽器のことは、現地に行って直接教えてもらったそうです。
関根先生が首狩り族の餌食にならなくて良かった(;´∀`)
空き缶にピアノ用の高級バネをつけた楽器は、シンセサイザーのような電子音がしましたね。(驚いたことに電力は不要)
参加者の方々は民族楽器をピロピロポコポコ鳴らしながら、関根先生の語る幅広く深い見識に感心し聞き入っていました。
なんという心地よい空間( ˘ω˘)スヤァ
世界一から教わった火起こしのコツ・おすすめ材など
火起こしのコツ
火起こしのコツ
- ヒキリ板にかける適正圧力は2〜4kg
- 重心をヒキリ棒に乗せる
- 喋りながら摩擦するくらいのリラックス加減が良い
- ヒキリ棒が黒光りした状態は火つきが悪くなる。先端が黒くなったら削り取るべき
- きりもみ式の場合、ヒキリ棒を回転させるのに使う手の場所は『手のひら全体〜pip関節(第2関節)』まで
- 弓切り式のコツは記事上部を参照
ヒキリ板の穴が摩擦で研磨されてしまう(黒光りした状態)と火付きが悪くなるので、その場合は穴に砂を撒いて摩擦抵抗をあげるという方法もあるそうです。(これはインディアンがやっていた方法)
板に掛ける圧力2〜4kgというのは個人的に驚きました。
強く押し付ける必要はないんですね。
関根先生の師である岩城正夫先生は、棒を回転させる際に『手のひら全体〜dip関節(第1関節)』までを使っていたそうなので、とくに正解は無いっぽいですね。
関根先生も手のひらが痛くなったら、指の部分だけを使って摩擦することがあるとのこと。
世界一から聞いたヒキリ棒のおすすめ素材
ヒキリ棒のおすすめ素材
- ウツギ(空木)
- ムラサキシキブ(紫式部)
- アジサイ(紫陽花)
- キブシ(木五倍子)
これらの生木を採取して3ヶ月以上乾燥したものが理想とのこと。
画像のように、適切な材を先端だけに付ける方法も有効とのこと。
補強するのに先端をタコ糸で縛っていました。
この縛り方もしっかり学んできましたよ(^o^)v
世界一から聞いたヒキリ板のおすすめ素材
ヒキリ板には杉を使用しておられました。
関根先生愛用の道具
【ナイフ】
OLFA(オルファ)のクラフトナイフL型。
通販で¥400くらいで買えちゃいます。
刃物研究家として辿りついた答えが¥400のナイフとは驚き!
【砥石】
商品名だけで、番手(荒さ)を聞くのを忘れていました…m(_ _)m
4種類ほど校庭の流しに置いてあったのは確認したのですが…
ちなみに私も先生に感化されて買いましたw
【火打ち石&火打ち金】
火打金は鋼鉄製のもの。
火打ち石は瑪瑙(メノウ)を使用。
火口(ほくち)はガマの穂(煮て灰汁に漬け乾燥させたもの)を使うのだとか。
♢私が購入した火打金と火打ち石♢
※関根先生が持っているものとは違います。
ちなみに、私は火口(ほくち)に『チャーティッシュ』を使っています。
縄文式切り欠きの作り方
火起こしは素材選びと適切な切り欠き作りが重要。
関根先生から縄文式の切り欠き作りを教えて貰ったのでご紹介いたします!
左右から何度も削り取るようにして三角形の溝を作る。
三角形の頂点から2mmほど下がった箇所に切り込みを入れる。
反対側の辺も同様に行う。
両方の切り込みの間にある木部をナイフの先端を使い切り取る。
ヒキリ棒の先端がズレないための溝を掘っていく。
私自身、やってみて思いました。
縄文式めちゃイイ!!
以前私がやっていた方法だと、切り欠きの頂点とヒキリ棒の中心部の位置が微妙にズレてベストポジションになりづらいという問題がしばしば発生していました。(これは方法というより私の腕の問題?)
しかし縄文式の場合、三角形の溝から左右対称に切込みを入れることで、左右上下4方向への位置のブレがほぼなくなります。
関根先生のワークショップに参加したい方へ
関根先生の焚き火ワークショップは定期的に開催されている模様。
興味ある方は、以下のリンクをチェック&申し込みをしてみてはいかがでしょうか?
http://tcacademy.jp/blog-category-26.html
さいごに
人間が生きるのに必要不可欠な火。
古代から令和まで引き継がれてきた古代の技術を学び、苦労して自分の手で火を創り出すという営みは自分という存在の成り立ちの一端を垣間見ることのできる尊い体験となるに違いありません。
我々現代人は今、激動の中にいます。
AI化を基調とした抜本的なイノベーションが叫ばれ、SNSでは若者が老人を「老害」と罵り、歴史や伝統を軽んじる傾向が散見されます。
しかしあなたが今、当たり前に使っている道具や生活環境を作ってきたのは誰でしょうか?
現代の若者ではありませんよね?
ずっと昔の祖先から親世代の人達によるさまざまな営みのもとに私達の暮らしが成り立っているのです。
変化の激しい現代、変化が重要とされる時代だからこそ我々の祖先が紡いできた歴史を見つめ、自分を含めた周りの環境の成り立ちをもう一度考え直す必要があると私は思うんですよね。
短い時間でしたが関根先生とご一緒させて頂き、そのように認識致しました。
それではお互い良き焚き火ライフを〜(^o^)
関根先生の主な著書